ジェンダーレス・アパレルブランドの台頭と採算構造
JNEWS会員配信日 2021/6/14
若者にとって、ファッションは自由や抵抗の象徴であり、自分の主義主張を仲間に伝えるアイテムとしても、支持されるデザインが変化している。1990年後半から日本でも流行しているストリートファッションは、バブル経済の崩壊によって、失業や貧困に苦しむ若者が増える中、人種差別を受ける中でもポジティブな思考と行動力で成功していった黒人のスポーツ選手やヒップホップスターをリスペクトする形で広がっていった。
そして現在は、男女差別の是正（ジェンダー平等）が、10代～20代前半の若者にとって、最も関心の高い社会問題になっている。世の中には「男らしさ」「女らしさ」を押しつけるステレオタイプな常識がたくさんあり、それに従う中では、自由に生きることはできないし、男女の所得格差も広がっていくばかりだ。この不平等を変革するための行動として、ファッションは最も表現がしやすい。
こうした時代背景から、海外では「ジェンダーレス」をコンセプトに掲げる新興ファッションブランドが急成長している。
英国ロンドンの「Riley Studio」は、ジェンダーニュートラルな大人用と子供用の服を製造販売しているアパレルブランドで、服の素材は、トレーサビリティが管理されたオーガニックコットン、ペットボトルから再生されたナイロン糸、毛糸の生産工場から廃棄される糸くずから再生されたリサイクルカシミア、リサイクルウールなどが使われ、商品は寿命が尽きるまでの生涯保証を付けるなど、持続可能性に配慮された製品作りが行われている。服のサイズは、XSからXXLまでの６種類があるが、男女の区別は無いため、商品アイテム数はシンプルな構成になっている。
同社は、メンズとレディースを同じ商品にすることで、商品の過剰生産を防ぎ、無駄な廃棄物を出さないことに注力するブランドとして、その考えに共感する消費者からの支持を得ている。
■Riley Studio
■Riley Studioコレクション（映像）
また、米ロサンゼルスを拠点とする「Big Bud Press」は、ビッグサイズ体型にも対応した服の製造販売をするブランドで、シャツとパンツが１つになったジャンプスーツが人気商品となっている。サイズは、すべての顧客の体型にフィットするように、サイズはXXSから7XL（ウエスト63センチから143センチまで）に細分化されているが、男女の区別が無いユニセックス商品とすることで、商品アイテム数を減らしている。
同社のブランドコンセプトは、１人の消費者が年齢と共に体重が変化していく中でも、利用し続けられる商品構成を目指すことで、顧客の年齢層は10代から40代までと幅広い。他ブランドにあるユニセックス衣料の中でも、大半は「平均男性にフィットするサイズ」に設定されているため、サイズ不適合で悩んでいるジェンダーニュートラルの消費者は多いことに着眼したビジネスモデルになっている。
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