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米国が仕掛けたベジタリアン育成と
食生活のエリート人材
written in 2009/2/2

 野菜の摂取量が減少を続ける日本に対して、米国では政府が「 5 A DAY(ファイブ・ア・デイ)」という運動を掲げてベジタリアンの育成にあたっている。この運動は「一日に5皿以上の野菜を食べよう」というもので、1皿がおよそ 70gとすると一日で 350グラムの野菜摂取量になる。これは健康を維持する必要最低限の量で、ベジタリアンになれば一日7皿(約500g)の野菜を食べているという。

このような運動の起源は、いまから30年前の1970年代にまでさかのぼる。当時の米国政府は多額の医療費を投下してるにも拘わらず、心臓病、ガン、糖尿病などの成人病患者が急増していた。それを危惧した当時の大統領が、その原因を突き止めるための委員会を設置して、国民の健康や栄養状態についての調査を徹底的に行なった。

それによってわかったことは、毎日の食事が栄養学を無視したとても酷い内容になっていて、しかも健康の専門家であるはずの医師でさえも栄養学の深い知識を持ち合わせていなかった。医師は薬に頼ってばかりで、毎日の食事による栄養学を無視した治療を行なっていたのだ。それではいけないということで、米国民の食生活を改善するためのプロジェクトが積極的に展開されていったのだ。その時に“お手本”として研究されたのが、日本の伝統的な食事(日本食)である。

この報告は、調査を担当した上院議員(ジョージ・マクガヴァン氏)の名にちなんで「マクガバン・レポート」と呼ばれたが、当時の医師会や食肉・畜産業界からは相当な反論や非難を浴びて、そう簡単に食生活の改善が成功したわけではない。関連の業界にとっては、それまでに販売してきた牛肉や乳製品が売れなくなってしまうためだ。しかし長い時間をかけて食生活の改革が行なわれてきたことにより、栄養学の専門家やベジタリアンが育ってきている。 5 A DAY運動については、日本でも2000年頃から知られるようになり、野菜の販売に関わる企業などが中心となって「ファイブ・ア・デイ協会」が設立されている。

■ファイブ・ア・デイ協会
http://www.5aday.net/

ベジタリアンの人口が増えてくれば、食品業界や飲食業界もそれに対応したメニューを提供することが商機となるわけで、案の定、米国では様々なベジタリアン向けのサービスが登場してきている。レストランやホテルがベジタリアンに対応したメニューを用意するのは特に珍しいことではないが、特筆しておきたいのは、大学が学内の大食堂(学食)やカフェテラスをベジタリアン・メニューへと移行して、学生に対する食物教育(食育)を行いはじめていることだ。

これには学生の健康に配慮した食事を与えたいということの他に、菜食メニューを通して環境や農業問題への関心が深いエリート人材を育成しようとする狙いがある。その例として、多くの政治家や有名人を輩出している名門校、エール大学では「The Yale College Vegetarian Society」というプロジェクトを創設してベジタリアンの育成を行なっている。同校の学生食堂では有機栽培された良質の食材だけを厳選して農業生産者から仕入れていることから人気が高く、それを目的に同校の入学を目指す学生もいるほど。

その他にも、ニューヨーク大学やコーネル大学などでも菜食メニューが充実しており、そこでの食経験かから本格的なベジタリアンへの道を歩み始める若者が増えている。これは食生活を大切にするエリート人材が育っていることを意味しており、禁煙の風潮によってタバコのCMが規制されたのと同様に、今後のビジネス界に大きな影響を与えるかもしれない。
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この記事の核となる項目
 ●変化している日本の食生活と、欧米のベジタリアン人口
 ●日本人の食品摂取量からみた食生活の異変
 ●野菜とサプリメントはどちらが優れているのか?
 ●政府が仕掛けた米国のベジタリアン市場とその事情
 ●世界のベジタリアンが求める日本食ブランド
 ●ベジタリアン市場における日本企業の戦い方
 ●農水省が考える日本食レストランの認証ビジネス
 ●健康理論に基づいた食事法〜 FOOD 2.0への動き
 ●100万人会員を超すオンラインダイエットサイトの事業モデル
 ●間違った知識の氾濫で求められる食品情報のスペシャリスト



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