消費者目線の共有サービスからスタートしたシェアリング事業は、非営利と営利の狭間で過渡期を迎えている。手数料率に対する消費者からの不満や、ワーカーに対する人件費の上昇などでサービスを停止する事業もある(JNEWSについてトップページ
営利と非営利の境に立つシェアリングエコノミーの欠陥

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JNEWS会員配信日 2019/7/1

 多様なモノやサービスを共有するシェエアリングサービスは、世界的に人気の起業テーマであり、日本でも新たに登場しているスタートアップの多くは、世の中をシェアリングエコノミーの力で変えたいと考えている。ただし、シェアリングの発想には、相互扶助の精神が根底にあるため、営利のビジネスとして事業を拡大していくこととのバランス感覚が難しい。

「Carpooling.com」は、2001年にドイツ・ミュンヘンの学生によって立ち上げれたライドシェアリングのプラットフォームである。当時はUberも存在していなかった時代だが、通勤中のマイカードライバーが、同じ方角の通勤者を同乗させることで、燃料代の節約ができるサービスとして広がり、2007年にはドイツ最大の相乗りサイトへと成長した。

当初のビジネスモデルとしては、大きく2つの収益源が設定されていた。1つは、通勤時間帯の混在を解消したい大企業に対して、Carpoolingのシステムをカスタマイズして提供することで、2つ目は、アプリの中に広告を挿入することである。
ドライバーと利用者との間に料金の授受はあったが、利用者からの手数料は取っていなかった。

しかし、会社の成長に伴い、投資家からも収益性の向上を求められるようになり、2013年からは、利用者からも少額の手数料を徴収する方針へと変更した。これが大きな失策となり、多くの利用者は他のライドシェアサービスへと流れてしまった。その後、同社は競合相手の「BlaBlaCar」に売却されている。

シェエアリングエコノミーの住民(利用者)は、ネットでの情報共有にも長けているため、一度、信頼関係を失うと、悪い評価や評判がSNS上で伝わりやすい。
対して、Uberの場合には、純粋なシェアリング(相乗り)ではなく、タクシーの代替サービスとしてスタートしているため、営利目的の収益化についても、利用者からの抵抗は低い。また、欧州の消費者は、米国よりもシェアリングサービスの営利化にシビアだという違いもある。

【シェアリングビジネスモデルの欠陥】

 スキル系のシェアリングサービスは、従来業者よりも安価で利用できるのが利点だが、労働者とは異なるオンデマンドワーカーの人材育成や管理をすることは、法的に禁止されている。利用者に対して質の高いサービスを提供しようとすれば、やがてこの問題に突き当たる。

2010年に米国サンフランシスコで創業した「Homejoy」は、ホームクリーニング人材の仲介をするプラットフォームとして急成長し、2013年にはベンチャーキャピタルから3,800万ドルの資金調達にも成功した。このプラットフォームで働く作業員は、専門のトレーニングを受けた後に派遣されるシステムになっていたが、これは、請負契約の個人事業者ではなく「労働者」の扱いになるとして訴訟問題に発展した。それがビジネスモデル上の欠陥として、ベンチャーキャピタルからも見放され、2015年にサービスを終了した。


家事・介護・育児などのシェアリングサービスは、ワーカー=個人事業者の立場として、固定給や健康保険などを負担しないことで安価な料金を提供できるものだが、それが法的に「労働者」として認定されると、サービスは成り立たなくなってしまう。

また、Homejoyでは新規顧客の集客方法を、正規価格の半額程度で利用できる割引クーポンを大量配布する方法に頼っていた。しかし、割引クーポンで獲得した顧客の大半は、固定客として定着しないことが明らかになっている。

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