規制緩和される電動キックボード共有サービスの利用特性
バスや地下鉄など公共交通の代替となる移動手段としては、1人乗りで近距離移動ができる乗り物としてマイクロモビリティ(超小型モビリティ)が世界的に注目されている。従来は、法律により公道を走行することの制約が厳しかったため、需要は限られていたが、コロナ感染対策として3密を避けることや、マイカー通勤者を減らす目的から、電動のマイクロモビリティは世界的に規制緩和される方向にある。
その中でも、電動キックボードは「駅から目的地まで」というようにラストマイルの移動をカバーする乗り物として世界の市場規模が年率12%のペースで成長している。日本でも、時速20km以下の電動キックボードが「特定小型原動機付自転車」という新しい車両区分に指定され、16歳以上であれば免許不要、ヘルメットの着用は任意とする道路交通法の改正案が衆議院で可決(2022年4月)され、2年以内には法改正が行われる見通しだ。
米シカゴ運輸局では、2019年~2020年にかけて電動キックボードの実験プログラムを行い、その利用状況をレポートとして発表している。同プログラムには、米国大手の電動キックボード共有サービスである Bird、Lime、Spinの3社が参加して、シカゴの地域内に合計で1万台のレンタル用キックボードが設置された。

1日平均では約4391回の利用があり、レンタル可能な台数に対する1日の稼働率は59.2%。1回あたりの平均移動距離は2.1マイル(約3.4km)、平均利用時間は18.5分という結果が報告されている。レンタル料金の設定は、基本料金が1ドル、1分あたりの時間料金が0.39ドルに設定されたことから、1回あたりの平均利用単価は約8ドルとなった。この料金設定については、約半数が満足していると回答したが、残りの半数からは「高い」という不満が出ている。
利用者の年齢は34歳以下の若い層が72%を占めており、レンタルの用途は「友達に会いに行く(34%)」「走行して楽しむ(33%)」「レクリエーション活動に参加する(31%)」などレジャー目的が多く、通勤用途で利用するのは16%と低い結果になっている。
■2020 E-SCOOTER PILOTEVALUATION(米シカゴ運輸局)
電動キックボードが新たな乗り物として認知している米国でも、乗り方のマナー、駐輪場所、料金設定、メンテナンス費用などの面で解決すべき問題は山積しており、共有サービスが事業として軌道に乗っているわけではない。乗り方に慣れてしまえば、電動自転車よりも便利な移動手段になるが、キックボードに関心の無い住民からは「シカゴの交通サービスとして認めるべきではない」という意見もあり、世論も二極分化している。
キックボードは、有効に活用すれば近距離の移動時間を短縮することができ、将来的には複数の交通手段を柔軟に組み合わせて、目的地まで最短時間での移動を実現する「MaaS(Mobility as a Service)」の一部に組み込まれていく可能性が高いとみられている。ただし、MaaSが本格的に普及していくのかは、また別の議論になっている。
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