儲かる商売の裏側
  
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  数ある飲み屋の中でショットバーの経営が手堅いのは、アルコール中心の売上構成のため、他の料飲店よりも原価率が低いことに理由がある。狭いスペースでも開業することができ、隠れ家的な雰囲気をウリにすれば、本来は客商売に不向きと言われるビルの2階や3階でも経営が成り立つ。
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水割り1杯でいくら儲けるのかを追求した
ショットバー経営
written in 2007/4/6

 庶民が景気回復をなかなか実感できないでいるのをよそに、巷では数十万から数百万円という高額の商品が発売してすぐに売り切れる。たとえば2005年にサントリーが50本限定で一本百万円というウイスキーを発売したところ、予約を開始した即日に完売した。一本百万円といっても、瓶のサイズは量販店に並んでいるものと同じで700mlしかない。1mlあたりに換算すると…、という無粋なことはさておき、それだけ高いウイスキーの価値があるのだろうかといえば、これは“イエス”というのが解答。百万円のウイスキーを購入している半数以上はバーや高級クラブなどの業者ということで、それを商売に使えば元を取れるという算段での購入だ。

近頃では隠れ家的なショットバーやスタンドバーが人気となっている。1ショットあたりの価格は5百円程度〜とリーズナブルな設定にすることで、会社帰りでも気軽に立ち寄れる店も繁盛している。バーの経営というのは水商売で、浮き沈みが激しいようにも思えるが、じつはやり方次第で、普通の飲食店よりも手堅い経営が成り立つ。それを裏付けるように、飲食店の台所事情を知り尽くしている業者向け酒販店が自らの副業としてスタンドバーを経営しているケースも多い。また取引先を増やす目的で、新規独立希望者に向けてスタンドバー経営の指南をする酒販業者もいる。

もともと飲食店(料飲店)は「ドリンクを売るのが商売」と言われている。客を店に呼び込むためには、美味しい料理、こだわりの料理を出すことが一番だが、料理の質を追求するほど食材の原価率は高くなり、店の利益は目減りしていく。そこでどうするかというと、料理よりも利益率が高いドリンクメニューを豊富に揃えることで帳尻を合わせている。そのため料理の評判が良くても、ドリンク類の注文が少ない店というのは採算上厳しいのだ。

ドリンクの中でも、やはり儲かるのは“お酒”である。しかもビールや日本酒よりは焼酎やウイスキーのほうが店側にとっては都合が良い。というのも、水割りや氷の量により濃さを調節できる(原液を薄めることができる)アルコール類は店側のさじ加減によって利益率をコントロールできるためだ。「水で薄めて売る商売」というのが、「水商売」の語源であるという説も有力。そう考えてみると居酒屋で安い焼酎の水割りを飲んでもあまり酔わなかった、と思い当たる節がある人も多いのではないだろうか。

「水商売」というのは、真正面から経営ノウハウが語られる機会は少ないが、それを科学的に探求していくと「水で薄めて利益率をコントロールする商売」と言えなくもない。同じサイズのグラスに注がれたウイスキーの水割りでも、1杯の値段は店のグレードによって全然違うは常識だが、それを経営者の視点からみれば、おもしろい水商売の世界が見えてくる。それは必ずしも夜の世界の話ばかりではなく、多方面の商売にも応用することができるノウハウである。そのカラクリを、ふだん何気なく飲んでいる1杯のウイスキーから学んでみよう。
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この記事の核となる項目
 ●ウイスキーのシングルショットはいくら儲かるのか?
 ●一般的な飲食店とショットバーの採算性比較
 ●ブレンドして利益をコントロールするウイスキーの製造工程
 ●水商売の原点といえるウイスキービジネス
 ●混ぜ方で異なるウイスキーの良し悪しと利益率
 ●希少な本物ウイスキーを世に広めるボトラー業者のビジネス
 ●本物ウイスキーへシフトする消費者の嗜好と酒販業界
 ●“水加減”で稼いできたボトラーズの商売
 ●スコッチウイスキーの流通構造とボトラー業者の役割
 ●地元の優良企業が狙う"本当に儲かる"フランチャイズ権の獲得
 ●ロハスに向けて流行る量り売り商法にみる小売店の新たな役割
 ●逆風の中でも躍進する酒屋の商品仕入術と銘酒の育て方


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