古紙回収ビジネスは、古紙の回収ルートと古紙の取引相場によって利益率が変わってくる。古紙の種類は多品目にわたるため、取引相場の高い古紙を、他業者よりも効率よく回収することがビジネスの急所になる (JNEWSについてトップページ
古紙回収業界に学ぶゴミを“金のなる木”に変える術

JNEWS
JNEWS会員配信日 2004/2/17
記事加筆 2021/9/8

 環境問題への取り組みが熱心になる中で、日本ではゴミを捨てることが難しくなってきた。古くなった冷蔵庫を買い換える場合でも、新しい冷蔵庫の価格が3万円程度で買えるのに対して、古い冷蔵庫の回収・リサイクル費用には6千円も支払わなくてはならない。これならば買取り価格はタダでもリサイクルショプに引き取ってもうらうほうが得だと考える人は多いはずだ。リサイクルショップでは、このようにしてタダで仕入れた中古冷蔵庫をアジア地域に輸出することで利益を得ている。日本では古くなってゴミとして扱われる家電製品も、簡単な修理をすれば海外では立派な商品として流通させることができるわけだ。

《国内の中古製品が海外市場へ輸出される状況(年間推定値)》

廃棄されるゴミが“商品”として再生できる資源には様々な種類があるが、最も広く知られているのは「古紙」だろう。家庭から不要になった古新聞や古雑誌を回収してくれる古紙回収業者は以前から存在している。バブル崩壊後は古紙の取引価格が下落したことにより業界は深刻なダメージを受けたが、近頃では中国を中心としたアジア地域において、日本の古紙に対する需要が急拡大して再び盛り上がりを見せている。古紙回収業というと“ちり紙交換”のイメージが強いのだが、現代では環境ビジネスの一分野として地方自治体やNPO、企業などとの関わりを深めながらのリサイクル業へと転換している。古紙業界の中には、各地域から古紙を回収する業者と、それをまとめて買い上げる卸業者とが存在しているが、この仕組みは他の再生資源物にも応用が効くものである。


【古紙回収ルートと利益率の関係】

 普段の生活で意識しない中でも古紙が再生されて製品となっているものは、新聞紙や電話帳、週刊誌、コピー用紙などの他に、石膏ボードや断熱材などの住宅建材まで、広く活用されている。再生技術が進化、普及したことにより「古紙」を製品の原料として求めている市場は、日本国内のみならず海外にまで広がっている。特に近年はアジア地域の経済成長が著しいため、そちらに向けた輸出量が急増している。

《国内古紙の輸出量推移(単位:トン)》

《国内古紙(新聞)の主な輸出国》

古紙ビジネスの特徴は、回収した古紙の取引相場や流通(再生)ルートは市場として形成されているため、回収業者がその都度、売り先を探すことなく、すぐに現金化できる点にある。ただし回収する古紙の種類は、新聞、雑誌、段ボールの他にも細分化されて、それぞれの取引相場は需給のバランスによって変動する。
そのため需要(買い手)に対して供給量(回収量)が少ない種類の古紙を効果的に回収することができれば、割の良いビジネスをすることが可能だ。そこで各業者は独自の回収先を開拓しては、少しでも効率の良い回収作業をしようとする。
つまり「取引相場の高い古紙を、他業者よりも効率よく回収すること」が、このビジネスの急所になる。

《古紙の回収~販売ルート》

古紙の回収業というと、一般家庭をトラックで巡回するチリ紙交換業者ばかりをイメージしがちだが、家庭から出る古紙だけでは一日の労力に見合うだけの回収量を確保することが難しい。また家庭から主に回収される古新聞は取引相場が1キロあたり 9~11円程度と安いため、よほど効率的に回収しないと回収業者は儲けることが難しい。

一方、高値で取引されているのが「上白」という種別で回収されている古紙である。これはプリンターやコピー機などでも使われている上質紙の裁落や損紙に該当するもので、菓子類や日用雑貨、靴などの外箱パッケージへと再利用できるため、古紙の相場としては最も高ランクの1キロあたり42~46円程度で取引されている。

《古紙の取引相場》

そこで民間の業者が、古紙の回収から収益を上げようとするなら、取引単価の安い古新聞が主体の一般家庭を対象とするより、上質の古紙が大量に廃棄される大企業や印刷工場などを専門に回収したほうが、はるかに効率的であることが理解できるはずだ。しかしこれら有望な“回収先”は、他の回収業者も狙っているため、新規参入した業者が契約を結ぶことはなかなか難しいのが実情だ。

【誰もまだ目を付けていない再生資源への着目】

古紙に限らず、各種再生資源の回収ビジネスが古くから存在しているが、それらの先行業者達は再生価値の高い“ゴミ”にいち早く着目して、それをタダで回収できるルートを独占的に確立してきた歴史がある。かつて国内の製造業が成長しはじめた時代には、各工場から廃棄される屑鉄材に着目し、これを回収して電炉業界に販売する鉄屑問屋を経営した人達が財を成した。鉄屑問屋というのは、回収する物の重量があるため、大手業者が全国の商圏を総取りするのではなく、各地域毎に地場の鉄屑問屋が活躍できる土壌があったのだ。

彼らは自分達のことを“ゴミ屋”といってはばからないが、その言葉には「自分達はゴミを大金へと変えることができる」という自負の念が表れている。時代や環境の変化によって、廃棄されるゴミの内容は変化しているが、その再生価値に誰よりも早く気付き、独占的な回収ルートを持つことができれば、それは売り先には困らず、しかも現金取引が常識の魅力的なビジネスになる可能性を秘めている。高値で取引される“ゴミ”の種類は変わっても、ゴミ(再生資源)回収ビジネスにおける稼ぎ方はいつの時代も変わらない。
■JNEWS関連記事:高齢社会で成長する遺品整理業のゴミ処理問題と法規制

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