豊中市では市民を対象にした「とよなか卒煙プロジェクト」を無料で実施。喫煙者が禁煙するための支援を禁煙補助薬とスマホアプリを通して実施。このプログラムはソーシャル・インパクト・ボンド方式の成功報酬型で設計されている(JNEWSについてトップページ
成功報酬型で実施される「とよなか卒煙プロジェクト」

JNEWS
2019/9/13

 日本の喫煙率は、昭和40年代には男性82.3%、女性15.7%だったのが、現在は男性27.8%、女性8.7%にまで下がっているものの、喫煙が健康に悪影響を与えていることに変わりはない。

厚生労働省が行った「受動喫煙防止等のたばこ対策の推進に関する研究」によると、たばこが原因で、がん・脳卒中・心筋梗塞などを発症する人は年間に103万人と推定され、約1.5兆円もの医療費が使われている。その中には、喫煙者本人だけではなく、受動喫煙によって健康を害した人もいることから、喫煙率を下げることは、社会全体の課題として重要視されるようになっている。

喫煙者を減らす新たな取り組みとして、大阪府の豊中市は2019年6月から「とよなか卒煙プロジェクト」をスタートさせている。このプロジェクトは、豊中市在住の市民に対して無料(豊中市への在勤者は3,000円)で卒煙プログラムを実施するもので、実際のサービスは、業務委託先となる株式会社キュア・アップが開発した「ascure(アスキュア)卒煙プログラム」によって運用される。

同プログラムは、喫煙補助薬(一般医薬品)のニコチンパッチを在宅で使用すると共に、スマートフォンアプリを通して、禁煙指導資格をもつ保健師や看護師が定期的なビデオ通話による面談サポート(1回30~40分)を6ヶ月間行うことにより、禁煙の成功率を高めるものである。

禁煙の治療プログラムは、内科のクリニックが禁煙外来としても実施しているが、3ヶ月間で5回の通院をする必要があり、仕事で忙しい人にとっては、通院時間がなかなか取れないのがネックになっている。それに対して、アスキュアの卒煙プログラムは在宅で行えるため、禁煙にチャレンジする物理的・心理的なハードルが低い。

豊中市の「とよなか卒煙プロジェクト」は、アスキュアの卒煙プログラムをベースに、市民に対して無料で提供されるのが特徴だが、これは「ソーシャル・インパクト・ボンド(社会的インパクト投資)」という成功報酬型の投資スキームにより設計されている。

三井住友銀行と社会的投資推進財団が主な出資者となり、卒煙プログラムの運用資金をキュア・アップ社に対して支払う。豊中市は、プログラム参加者(定員上限900人)の中で、6ヶ月後の禁煙成功率が50%を超した場合には、プロジェクト成功と見なして、出資者に対して最大6,100万円の成功報酬を、出資者に対して支払う取り決めになっている。

プログラムが失敗した時(禁煙率が50%に達しない)のリスクは、出資者が背負うことになるため、豊中市は自治体としての財源を無駄にすることが無い。一方、出資者は、自治体が行う公共事業を新たな投資対象とできるのが魅力で、主に医療費の削減を目的とした、ソーシャル・インパクト・ボンド方式の健康改善プログラムは、全国の市町村で増えていくことが予測されている。

ascure(アスキュア)卒煙プログラム

とよなか卒煙プロジェクト

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