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学生アスリートが自身の活動資金を稼ぐNILプログラム

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JNEWS会員配信日 2022/8/29

 学生アスリートが報酬を得ることの是非は、米国でも長年議論されてきた問題だが、個別の選手が企業とスポンサー契約を交わしたり、商品の広告塔となって報酬を得ることについては、原則として禁止されてきた。しかし、全米大学体育協会 (NCAA) は、学生アスリートが自分の名前、画像、肖像などから利益を得ることを認める規約変更を、2021年6月に発表している。

この背景にあるのは、米国では学生スポーツチームの監督やコーチが高収入を稼ぐ中で、チームの主役である選手だけが無収入のままで、活動資金の確保に苦労するのは不公平である、という社会風潮が高まっていることだ。

米国の学生アスリートは、大学の学費、寮滞在費、食費、遠征費、用具の購入費までを含めると4年間で2000~3000万円の資金が必要と言われている。毎日の練習に加えて、学業のハードルも高く、Grade Point Average(GPA)という指標によって毎期の成績が管理されている。GPA平均点の90~95%をキープしていないと、公式試合に出場できないというNCAAルールがあるため、練習以外の時間はアルバイトに明け暮れることもできない。

そのため、カリフォルニア州では、NCAAよりも先に、学生アスリートが肖像権などで収益化できる権利を州法として認めている。他の州も、カリフォルニア州に追随する流れとなっていることから、NCAAは時代の変化を考慮して、学生アスリートの収益化を認めるようになった。この権利は、Name(名前)、Image(イメージ)、Likeness(肖像)の頭文字から「NIL」と呼ばれている。

NCAA adopts interim name, image and likeness policy

アスリートがNIL権を行使して手軽に行えるのは、インフルエンサーとしてフォロアーを増やして広告収入を得たり、企業案件のスポーツ用品などを紹介することである。既に学生アスリートの中からは、人気インフルエンサーが多数登場してきている。もともと、実力のあるアスリートには多くのファンが集まりやすいため、インフルエンサーとしての適性は高い。

米ワシントン州にあるゴンザガ大学の男子バスケットボール部に所属するチェット・ホルムグレンは、今年入学したばかりの新入生だが、高校時代には、FIBAU19 ワールドカップでMVPに選出された実績を持ち、大学バスケットボールの年間を通して最も優秀な選手を決める「NABCフレッシュマン・オブ・ザ・イヤー(2022年)」の候補リストにノミネートされている。彼の Instagramは1年間でフォロアー数が約40万人増えて、現在は63万人となっている。

チェット・ホルムグレン(Instagram)

また、オハイオ州立大学のフットボール部でオフェンシブタックルを担当するパリス・ジョンソン・ジュニアは、NCAAの規約改正が行われて以降に、スポーツウェアブランドの CULTURE KINGS(カルチャーキングス)と提携して、同社の製品をInstagramや Twitterで紹介している。彼のフォロアー数は爆発的に多いわけではないが、CULTURE KINGSがターゲットとしたい顧客層と重なっており、1投稿あたりのエンゲージメント率は平均で7%、多い時には30%を超すこともある。

パリス・ジョンソン・ジュニア(Instagram)
CULTURE KINGS

米国ではプロのアスリートが約5000人いるのに対して、大学チームに所属して活動する学生アスリートは約48万人いる。その中には、実力とスター性やカリスマ性を兼ね備えた人材が、ゼロコンマ何パーセントかの割合で存在するため、若者向けの商品やサービスを展開したい企業にとっては、彼らを他社よりも早く発掘して、ブランドのイメージキャラクターやアンバサダーとして起用することは、効果的なマーケティング手段になっている。

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