ストリーミング配信市場の成長により、有名アーティストの楽曲著作権が投資対象として取引されるようになっている。アーティストは音楽著作権の中でも、ネット配信の権利のみを切り離して売却することで、楽曲自体は失わずに過去の作品を収益化することができる(JNEWSについてトップページ
投資会社が着目する音楽著作権の価値と楽曲買収

JNEWS
JNEWS会員配信日 2021/6/30

 海外では、大物アーティストが楽曲権利を売却する動きが相次いでいる。「風に吹かれて」「時代は変る」など数々の名曲を生み出してきたボブ・ディランは、過去に作詞作曲した600曲以上の出版権をユニバーサルミュージックグループ(UMPG)に売却したことが、2020年12月に発表された。正確な売却額は公表されていないが、約3億ドルと推定されている。これにより、該当作品が生み出す楽曲使用料は、UMPGのものとなる。

この契約では、パブリッシング・ライツと呼ばれる楽曲の出版権(テレビ、ラジオ、映画、ネット、企業広告などで二次使用する権利)のみが売買の対象となっており、今後もボブ・ディランが楽曲の作詞作曲者であることに変わりなく、コンサートで演奏することにも支障は生じない。


過去作品の出版権を買収する会社にとっては、テレビやラジオからの楽曲使用料や、ストリーミング配信サイトからの権利収入を、著作権の保護期間が終了するまで永続的に得られるようになる。2020年のコロナ禍以降は、ストリーミング配信サイトが急速に成長しており、Spotifyだけでも、有料会員数が前年比で25%増加した。

一方で、アーティストはライブ活動ができない状態が続いており、バンドメンバーやスタッフの人件費も含めた、当面の活動資金を調達するため、過去作品の出版権を売却したいという案件も増えている。

英国ロンドンを拠点にする「Hipgnosis Songs Fund(ヒプノシス・ソングズ・ファンド)」は、そうした音楽業界の動向に着目して、楽曲著作権を専門に投資するファンド会社として実績を上げている。創業は2018年だが、投資家から3億ドル以上を調達して、ジャスティン・ビーバー、ビヨンセなどのヒット曲を含む作品リストを買収することで成功した。現在は英国の上場企業として、資金調達額も3倍以上に増えている。

同社の投資戦略は、世界的なヒットチャート「Billboard Hot 100」で過去に10位以内に入った曲や、グラミー賞の受賞曲を中心に権利を獲得して、現在では6万曲以上のポートフォリオを組んでいる。ポップスとロックが全体の7割を占め、リリースから10年以上が経過して、幅広い世代から支持される楽曲が主な投資対象になっている。



《Hipgnosisが保有する楽曲資産》

《楽曲資産の曲年齢》

Hipgnosis Songs Fund

ストリーミング配信の市場では、各アーティストのフォロアー数から、楽曲の再生数が見込めるのかを予測することは可能で、過去のヒット曲は株式投資よりも高い利回りを得られる、というのが同社の見解である。音楽著作権は金融市場との相関関係が低いため、株価暴落に備えた代替投資先として機関投資家からの資金も集まり始めている。

音楽の著作権には複数の権利が入り組んでおり、投資ファンドは楽曲に関するすべての権利を買収するわけではない。彼らが狙うのは、楽曲の作詞作曲者(コンポーザー)が保有する、ストリーミングやコマーシャルなど今後の成長が見込める使用権に限定されている。

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