ベンチャーキャピタルがスタートアップに行う投資の成功確率は低く、およそ6割は出資額を回収できていない。一方で、地味ながらも高収益を上げている中小企業は多いため、彼らに出資ではなく融資でハイリターンを狙う投資手法が注目されている(JNEWSについてトップページ
変化するベンチャーキャピタルの投資手法と出口戦略

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JNEWS会員配信日 2021/8/21

 これまでのエクイティファイナンス(株式による資金調達)では、ベンチャーキャピタル(VC)が、スタートアップ企業に対して約10年のスパンで出資をして、10倍のリターンを得ることが基本的な投資方針になっている。10年で10倍というのは高リターンにみえても、年率換算すると7%程度の利回りである。しかも、出資した会社の成功確率は低い。

投資データ会社のCorrelation Venturesが、ネットバブルの2001年から2013年にかけて行われたVC投資(21,000件)の結果を分析したところでは、出資先の65%は出資額を回収することができず、10倍以上のリターンを得られた出資先は、全体の4%に過ぎない。そのため、50倍以上のハイリターンが得られる1%未満のユニコーン企業に依存するような、歪んだ投資構造になっている。

《米国VC業界の投資成果(2001年~2013年)》

Venture Outcomes are Even More Skewed Than You Think

コロナ禍では、多くの業界で創造的破壊を起こす変革が起きていることから、VCの出資意欲は旺盛であるものの、ユニコーン候補となる一部の企業に投資が偏りがちで、中小のスタートアップにまで資金が循環しない状況が起きている。

しかし、中小ビジネスの中でも、高収益体質の会社は多数あることから、彼らにVCとは異なる形で資金提供をして、安定的に年間利回り10%以上を達成しようとするのが、「Venture debt(ベンチャーデット)」と呼ばれるベンチャー貸付の分野だ。銀行融資よりも資金提供の手数料は高いが、創業者が株式を手放すよりは、将来的にみた資金調達コストは低い、というのがベンチャーデットが狙う領域である。

《スタートアップ資金調達の長短》

  • 株式による資金調達
    利息や返済期限の無い資金を投資家から調達できるが、創業者は株式を手放すことになるため、持ち株比率は次第に下がっていく。株主となった投資家は、経営に口を出すこともできるため、事業の意思決定に支障が生じやすくなる。
  • 銀行融資による資金調達
    低金利で融資を受けることができ、返済期限を守れば、経営に口を出されることはない。ただし、スタートアップに対する審査基準は厳しく、融資実行までには時間がかかる。融資の限度額が決まっていることも、事業の成長スピードを遅らせる要因になる。
  • ベンチャーデット(ベンチャー貸付)
    銀行融資と比べると資金の調達コスト(手数料)は高いが、最短1~2日間でのスピード融資が可能。ただし、高収益体質の成長企業だけを融資対象とするため、すべての会社に融資条件が適合するわけではない。ハイコストの資金ではあるが、上手に活用して資金繰りをしていけば、株式を希薄化させずに事業を成長させていくことも可能。

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