2020年のベンチャーキャピタル市場は、世界の低金利政策で行き先を無くした資金が流入して、 投資バブルが継続している。一方で、ソフトバンクの経営動向に翻弄されるリスクも抱えている(JNEWSについてトップページ
2020年有望ビジネスの着目点(ベンチャー投資市場動向)

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JNEWS会員配信日 2019/12/28

 2019年には、これまで世界のテックビジネスに積極的な投資をしてきたソフトバンクのファンドにも綻びが生じて、「WeWork(シェアオフィス)」「OYO(格安ホテル予約)」「Wag!(犬の散歩サービス)」などは、ビジネスモデルの再考が求められている。この影響は、他の投資ファンドにも波及していくことも懸念されている。一般向けのシェアリング系サービスについては、手掛ける事業者が増えすぎており、集約・統合の動きが出てくるだろう。

しかし、スタートアップへの投資自体は活発で、投資市場の分析をするPreqinとVERTEXの共同レポートによると、世界のベンチャーキャピタル(VC)による投資額は、2018年末の時点で8,560億ドル(約94兆円)の規模が、2022年までには1兆ドルを超すことが予測されている。

《世界VCの主な投資対象》
○AI(画像、音声認識)
○ロボット
○医療テクノロジー
○金融、不動産、保険テック
○eスポーツ関連
○電気自動車、自動運転
○新交通サービス(Maas)
○暗号通貨
○サイバー攻撃、セキュリティ対策
○店舗の無人オペレーション

巨額投資の背景にあるのは、世界各国の低金利政策により、魅力的な金融商品が少なくなっていること。その代替投資先として、スタートアップ企業と不動産に資金が流れている状況である。さらに、従来のベンチャーファンドは北米と欧州が主体であったのが、中華圏からも、多様なVCが生まれてきていることも、投資バブルに拍車をかけている。

しかし、世界のVC市場でもソフトバンクの影響力は大きく、2019年に世界で行われた出資案件で最も高額の取引は、ソフトバンクが「WeWork」に対して行ったものである。2020年は、ソフトバンクに経営破綻の噂が広がるようなことがあれば、世界同時株安を引き起こす懸念がある。2019年の世界VC市場で、ソフトバンクの投資資金は10.5%ものボリュームがあるためだ。

《世界ベンチャーキャピタルの資金運用額》

【スタートアップ投資減税とCVC】

一方、日本では2020年に「スタートアップ投資減税」が予定されている。この制度は、大企業が、設立10年未満の非上場企業に対して1億円以上の出資をした場合に、出資額の25%相当を所得税から差し引くものである。そのため、黒字を出している大企業は、そのまま所得税を払うよりも、有望な事業を展開するスタートアップ企業に出資をするほうが、節税対策をしながら、将来への種蒔きができるメリットがある。

このような一般企業の出資形態は「コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)」と呼ばれるもので、キャピタルゲインを投資の主な目的とするのではなく、出資先のベンチャー企業を「研究開発の出先部門」と捉えることで、スタートアップ特有のアイデアや行動力、創業者の個性を損なわずに、ビジネスパートナーとして新ビジネスの芽を育てていくことができる。

大企業が、これからの新規事業として注視すべき市場は多方面にわたるが、それらすべてを社内で研究開発してことはできないため、自社にCVCの投資子会社を作り、有望と判断した複数のスタートアップ企業に対して出資をしていく方式は、グーグル、アマゾン、フェイスブック、マイクロソフト、アップルが得意とするやり方でもある。

グーグルのCVC子会社として2009年に設立された「Google Ventures(GV)」では、45億ドル以上の資金が運用され、インターネットの領域に留まらず、ロボット工学、量子コンピューティング、食品、農業、ヘルスケア、生命科学など、多方面のスタートアップ企業への出資が行われている。

GVの出資先ポートフォリオ

日本の大企業に、スタートアップをパートナーにした新しい企業文化を築けるかは、未知数な面があるが、税制面の規制緩和により、CVC方式の出資案件が増えてくることは、日本のベンチャー起業家にとっては朗報である。

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・スタートアップ投資減税とCVC
・中国が鍵を握る2020年のテクノロジー動向
・中国で普及するスマートテレビの動向
・世界からみた2020年の不動産市場動向
・海外投資家が注目する日本の賃貸マンション市場
・人手不足の正体と2020年の雇用、労働問題
・年収から時間単価でみる労働価値の変化
・人生100年時代に向けた収入源と資産形成
・パートタイム労働者から起きる労働組合の変革トレンド
・同一労働同一賃金で広がるリモートワークの働き方
・令和時代の価値観と生き方/アフターデジタルの社会

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