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引退者から脱サラ組へ譲渡される 中小ビジネスの取引方法 |
written in 2009/10/1
日本国内では株式会社、有限会社、合名・合資会社などの“企業”が 150万社ほどある。これに法人成りしていない自営業者の数を加えると 約430万社もの事業者が存在している。ところが、これらの事業を他人に売却・譲渡したいと考えても、円滑な取引ができるのは、株式を上場している約5000社に過ぎない。上場企業は「株価=会社の値段」として取引できるが、残り99%以上の会社は事業の価値を正しく算定することが難しいため、売買市場が十分に整備されていないのが実態である。
一方、米国では事業売買を専門とする「ビジネスブローカー」という専門職が存在しており、不動産仲介と同様の流れで案件のマッチングから契約までを担当している。ビジネスの売り案件は事業概要として、現在の売上高、オーナーの所得、預金残高、借入金の有無、店舗や設備の状況、保有している在庫の評価額、家賃など月々かかる経費などの財務内容が開示された上で、譲渡希望額が提示される。
その金額というのは、同じ業績のままの経営を3〜5年維持できれば元が取れる水準に設定されているのが相場だが、商売は水もののためオーナーが変わればどうなるかわからない。中小ビジネスの売買が上場企業のM&Aと異なるのは、決算書に記載されている資産額が、必ずしも“正確な会社の価値”を示しているわけではない点である。
中小の業者は税金対策の面から、会社の収支は赤字スレスレのところにしておいて、オーナーの所得としてガッチリ得ているケースもあるため「会社資産+オーナー所得」で見ないと実際のところはわからない。しかも会社が保有する資産には換金性の低いものも含まれて、資産が多いほど優良というわけではないのだ。小売業における“資産”といえば商品在庫が大半を占めているが、これは少ないほど身軽な優良企業とみるのが常識だ。
《オーナー所得と商品在庫でみた売り案件の比較》
売り案件Aは1千万円の在庫資産を保有してオーナーが3百万円の年収を得ているのに対して、Bは3百万円の在庫しか持たずに1千万円の年収を得ている比較では、譲渡提示額は5百万円高くても、新たなオーナー希望者(買い手)としてはBを購入したほうが賢明である。
そうして考えると、立派な店構えで豊富な商品が陳列されている小売店というのは、第一印象では魅力的な売り案件のように見えるが、実際に商売を引き継いでみると、在庫価値が目減りしていくスピードは速く、広い店舗=高い家賃の店を運営していくスタッフ人件費の負担も大きいため、忙しい割に儲からない。
一方、店舗は持たずに自宅の一室で運営しているようなオンラインショップは、事業としての体裁は良くないかもしれないが、それでオーナーが年収1千万円以上を稼いでいるようなら、無在庫で経費をかけずに利益を生み出せる、優れた小売業ということで“買い”の案件といえる。
そのためビジネスブローカー達の間でも、ネット上で利益を上げているビジネスは優良案件としてとしての評価が高まっている。ただしホームオフィス型のスモールビジネスは、個人オーナーの資質やノウハウで成功しているウエイトが高いため、その部分を上手に引き継げるのかが鍵になる。
(起業家のための成功法則一覧へ)
●ビジネスブローカーから評価される中小のネットビジネス
●オーナー所得と商品在庫でみたビジネス(事業)の価値
●ネットビジネスが売買の優良案件と評価される理由
●ドメイン売買市場のその後とサイト売買
●米国における中小ビジネスの売り方
●ビジネスブローカーによる取引仲介モデルの解説
●分割払いでビジネス売買が行なわれる理由とは
●ネットビジネス売買の傾向と特徴
●副業でコミュニティを育てて売り買いするという発想
●コミュニティサイトを制作〜売却する副業モデル
●スモールビジネスが評価される時代への回帰
●知的人材が求めるフレキシブルワークと新たな隠れ家的空間
●「人材は会社の資産」という常識の嘘とプロ人材育成の商機
JNEWS LETTER 2009.10.1
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