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電子書籍で儲けるのは誰なのか?
メジャー契約から個人出版へ
written in 2009/8/24

 つい十年前まで、百貨店やショッピングモールで集客力のあるテナントと言えば「書店」が筆頭に挙げられていた。特別な目的はなくても、とりあえず書店に行けば空いた時間を潰すことができるし、偶然に立ち読みした中で気に入った本に出会うこともできる。ビジネスマンにとっても、新しい知識を収集する場として書店は欠かせない存在であった。

ところが最近では、その書店が“つまらない場所”と感じることも多くなっている。どの店も品揃えは、新刊のベストセラーが中心で代わり映えしない。目的の本を探そうとすれば、アマゾンのようなオンライン書店のほうが便利であるし、ユーザーが投稿した書評も充実している。これなら、わざわざクルマで書店まで行く必要もないだろうと思う人が増えているのだ。

公正取引委員会の報告によると、全国に存在する書店の数は、2001年には21,000店だったのが、2008年には16,000店にまで減少している。一年間に閉店する書店が 1,200店あるのに対して、新規開店するのは 390店と、その数値だけをみれば完全な斜陽産業であることがわかる。ただし書店の総売場面積は逆に拡大している傾向にある。

それが意味するのは、売場面積が拡張できない中小の書店は次々と閉店へ追い込まれて、資金力のある大手書店だけが売場面積を広げることで生き残りを賭けているという状況だ。しかし大手でさえも安泰というわけではない。出版業界は全体でベストセラーが生まれにくくなっており、売上の不振分は新刊本を増やすことで補おうとする構造になっている。しかし国内で新刊本の出版点数が増えているにも拘わらず、その総販売部数は十年前より2割近く落ち込んでいるのだ。

《書籍の総販売部数と新刊本点数の推移》
    書籍の総販売部数と新刊本点数の推移

それでも書店の経営が維持できるのは、書籍の流通は委託販売制が基本で、店頭に並べても売れなかった本は返品できるためだが、その返本率は4割を超えている。つまり10冊の本を刷っても4冊が売れ残るという状況は環境に優しくないし、出版社にとっても効率の良いビジネスとは言えない。しかもこの数字にはベストセラー本も含まれているため、大多数のヒットしなかった本に絞ってみれば、更に返本率は高くなっている。

発売後に売れなかった時のリスクは出版社が背負うことになるが、必ずしもその本の内容が悪いというわけではない。読者層が限られてしまうビジネス書の話でいえば、1万部売れる本は希なヒット作で、平均的な売れ行きは3千〜5千部といったところである。すると、著者に入る印税収入は30〜50万円にしかならず、本を書くことだけで生計を立てられるのは、プロの中でもごく一部の人達に限られてしまう。

そこで見直されているのが「書籍」そのものの規格や形式である。読者にとっても、分厚くて重い本を通勤カバンに入れて持ち歩きたいとは思わないし、読み終えた本を収納しておくスペースも自宅に確保することは難しくなっている。本の読み方にしても、忙しいビジネスマンは購入してすぐに読むのではなく、有意義な知識や情報をストックしておいて、必要な時に検索して活用したいというニーズへと変化している。それに伴い、書籍の電子化は避けられない流れだが、その時の書店、出版社、著者の役割や収益モデルは従来と異なる形になり、新たな知識の売り方ができるようになる。
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この記事の核となる項目
 ●アマゾンが狙う電子書籍ストアーのビジネスモデル
 ●グーグルが目指す電子書籍と日本版ケータイ書籍の業界構造
 ●グーグルブックスのビジネスモデルについて
 ●日本発ケータイ書籍市場の業界構造
 ●国内電子書籍市場の業界構造
 ●ケータイ書籍フォーマット開発会社のビジネスモデル
 ●電子書籍で儲けるのは誰なのか?メジャー契約から個人出版へ
 ●電子書籍の採算性からみた出版形態の変化
 ●紙書籍と電子書籍との印税比較
 ●電子書籍の価格はいくらが妥当なのか?
 ●知的プロの視点を学ぶ:通勤者向け音声教材の制作ビジネス
 ●ライセンス管理で何倍にも伸びるクリエイター作品の価値
 ●紙より儲かる電子書籍ビジネスの利権争いと新たな販売手法
 ●アグリゲーターが変えるコンテンツ業界と知的権利の流通機能


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