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設計図と模型を売ることでも成り立つ
モノ作り起業の方法
written in 2007/8/19

 日本人はもともと手先が器用でモノ作りが得意な民族であった。そのため昔の日本製品は完成度が高く、品物によっては中古市場でプレミアが付いている。ところが近頃では品質よりも“コストの安さ”が重視されるようになって、人件費が安いアジア諸国へ製造の拠点が移っているのは周知の通りだ。それに伴い、日本の製造業者はコスト面で海外の工場に太刀打ちができなくなり、廃業考える経営者が増えている。今すぐに倒産ということではないにしても、自分の息子に工場を引き継がせることはせずに、自分の代で工場を閉めようと考えることは、零細工場の経営者ならごく普通の選択肢になっている。

その一方で、新たにモノ作りビジネスにチャレンジしようとする人達もいる。これは製造業の現状を知らない無謀な挑戦のようにも思えるが、彼らなりの勝算があってのことだ。最近の大手メーカーが作る製品はコストダウンを追求するあまり品質で妥協している面があることは否めない。たとえばオーディオ用のアンプにしても十万円以上する高級機でも、筐体の中には数十円程度の部品が多数使われている。これをもう少し高価な数百円の部品に変えるだけで音質が見違えるように良くなることがある。そこで個人のオーディオ愛好者が既製品の改良(モディファイ)をすることからスタートしたところ、同じ愛好者達から好評となって個人メーカー(ガレージメーカー)を設立したという話もある。もともと大手メーカーでは“価格と品質の妥協点”を見つけて製品を市場に投入しているため、品質にこだわるガレージメーカーが上級ユーザーから支持されるニッチな領域は存在しているのだ。

自分でメーカーを立ち上げる方法にはいくつかの選択肢がある。経営者自らが職人(製作者)として小さな工場(工房)を持つことも一つの方法であるが、近頃では製品の企画や設計をメインとして、自前の工場を持たずに製造部分を外部の工場にすべて委託するファブレスメーカーが広がりを見せている。これは、不況で問題を抱えていた米国シリコンバレーの半導体回路開発会社が編み出した方法に端を発している(2006年11月9日号)。今では半導体回路だけでなく、雑貨、インテリア、精密機械部品、建築資材、住宅機器、家電、電子機器、食品や化粧品などさまざまな分野でファブレスメーカーがみられる。世界的に有名な企業では、スポーツ用品のナイキが、製造を各国の提携した外部の工場にすべて委託し、ナイキ本社では製品の企画と販売に専心している。

ファブレス方式であれば、理屈の上ではパソコンに向かったデスクワークだけでメーカーを立ち上げることも可能だ。製造以外で零細メーカーにとって課題となるのは販路の開拓と在庫の問題だが、最近ではWebサイトからの予約生産方式とすることで両方の問題をクリアーすることができる道もある。ただしファブレスメーカーの中でも成功しやすい分野と、成功しにくい分野があり、その違いがどこにあるのかを理解しておかなくては、ゼロからのメーカー立ち上げは難しい。もちろん零細メーカーといえども、品質ばかりを追求して利益を度外視しては経営が成り立たないため、製品の企画、開発から製造工程のどの部分で利幅を厚くするかも重要なポイントになる。そこで今回はモノ作り起業ということで、個人からのメーカー立ち上げがどんな方法であれば可能なのかを考えてみることにしよう。
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この記事の核となる項目
 ●ブランド自転車が安く売られている理由
 ●ブランド自転車メーカーの業界構造について
 ●市場のすき間を狙った折り畳み自転車の開発商機
 ●デザイン力で勝負するエアロパーツメーカーの業界裏事情
 ●ファブレスメーカーと工場の橋渡しをするOEM商社の存在
 ●伊アパレル業界にけるインパナトーレの役割
 ●エアロパーツの裏流通ルートと機密漏洩問題
 ●設計図と模型を売ることでも成り立つモノ作り起業の方法
 ●洋服の型紙を売るパターンメーカーのビジネス
 ●廃業する工場を再利用した職人の開業支援とレンタル工房
 ●半導体業界にみるデザイン会社のライセンス型ビジネスモデル
 ●好きな分野で物作りの夢を実現させるガレージメーカー
 ●フリーエンジニアとしての起業スタイルと単価設定の考え方
 ●知財社会を担うサラリーマン技術者が独立起業を果たす道


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JNEWS LETTER 2007.8.19
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