自転車のシェアリングサービスは各所で注目されているものの、料金の単価は安いわりに、車両の整備コストは高くて収益性は低いことから、自治体との連携による事業モデルが主体になっている。 (JNEWSについてトップページ
カーシェアリングより難しい自転車シェアリング事業の採算

JNEWS
JNEWS会員配信日 2012/4/10

 環境に優しい乗り物ということであれば、クルマよりも自転車のほうが適している。そこで、自転車のシェアリングサービスが実現できれば、交通渋滞の解消、ガソリン消費や環境汚染の軽減など、様々なメリットがある。

自転車の本体価格は安いために、高価な四輪車を調達してシェアするよりも事業化はしやすいように思える。ところが実際に、自転車のシェアリングサービスを実施している団体からは、「カーシェアリングよりも事業化が難しい」という報告が相次いでいる。その理由は、自転車のレンタル料金がそれほど高く設定できない一方で、予約や使用状況を管理するシステムや、安全整備にかかるコストが高いことが挙げられている。

ニューヨーク大学では、過去2年間にわたり、学生や教職員を対象とした自転車のシェアリングサービスを実験的に行っていた。中古の自転車を活用する方法だったが、整備にコストがかかりすぎる、屋外の駐輪ステーションは自転車が雨ざらしになるため、錆びて痛みやすい、などの問題点が見えてきた。

さらに、シェアリングの管理システムとして、学生証をスキャナーに読みとらせてレンタルする仕組みを作ったが、その開発・維持のコストも高くて採算が合わない。また、自転車シェアリングを経験した人の中では、「自分の自転車があったほうが便利だ」ということに気づいて、レンタルを利用し続けるのではなく、「購入」に至るケースが少なくない。

《自転車シェアリングにかかるコスト》

ただし、自転車シェアリングは、交通渋滞を緩和するなどの効果があるため、自治体が採算を度外視して導入を進めるケースもある。そのため、民間の業者が自転車シェアリング事業に参入するのであれば、自治体との提携モデルにすることが望ましい。

米国には、各州の自治体をクライアントとした自転車シェアリングのプロバイダー会社が複数登場しており、シェアリング用に改造された自転車と管理システムをセットで納入している。その一つ、 Alta Bicycle Share社(アルタバイクシェア)は、2014年までにシカゴで導入予定の自転車シェアリング事業の入札に成功、合計5000台の自転車と、500ヶ所の駐輪ステーションを整備する計画だ。

このシェアリング事業に投下される公的資金は2100万ドル(約17億円)の規模で、その中の 1800万ドルは交通緩和、環境保全などの名目による国からの補助金、残りの300万ドルはシカゴ市が負担する。事業開始後の継続的な経費については、利用者から徴収する会費、自転車のレンタル料、地元企業からの広告料やスポンサー料などで賄えるという見通しだ。

しかし、利用者の安全を確保するためのコストとして、車両の整備費や保険料の負担が次第に重くなることもあり、乗り物のシェアリングサービスは、決して儲かる事業ではないことがわかってきた。特に保険料は、実際の事故件数によって料率が大きく変動するため、普段はあまり乗り慣れていない運転者に、どこまでの保険対応をするのかは、今後の検討課題といえる。

《自治体との提携による自転車シェアリング事業》

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・安全コストが重荷になる米カーシェアリング業界
・米政府によるカーシェアリングへの規制動向
・個人間カーシェアリングのリスクと保険会社の対応
・自転車シェアリング事業の採算性と問題点
・自治体との提携による自転車シェアリング事業
・リスクを軽減した個人間シェアリングの仲介プラットフォーム
・知識やスキルをシェアリングするプラットフォーム
・保育園の代わりとなる育児のシェアリングサービス
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