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エコを見える化することで生み出す
環境マネーの錬金術
written in 2009/5/20

 我々が無意識のうちに排出している二酸化炭素(CO2)の量は、年間で一人当り10トンにもなる。人間は呼吸をするだけでもCO2を排出しているが、それに加えて電気を使ったり、自動車に乗ったり、缶やペットボトルを使うことでも、その製造からリサイクルまでの経路で多量のCO2がまき散らされて、その総量が一人当りで10トンにもなるというわけだ。もちろんこの数字には個人差があり、工業製品に囲まれて近代的な生活をしている人ほど多くのCO2を排出している。普段はそんなことを気にしなくても、環境省が普及に力を入れている「環境家計簿」を使うと、各家庭で消費している電気・ガス・水道・ガソリン代金からCO2の排出量が計算できるようになっている。

環境家計簿(えこ帳)

自分が排出しているCO2量の概算がわかれば、それをできるだけ減らしてみようと考えるのが人の心理で、そこからエコ消費者を育成したいというのが国の考えだ。しかしそれで旗色が悪くなるのはモノを売る企業の側だろう。工業製品を生産〜販売する過程では、必ず何らかの形でCO2を排出しているため、それを厳格に算定されるとエコ社会では企業が敵役になってしまうため、その矛先を変える必要がある。

ちょうどその折り、政府は経済危機対策として省エネ効果の高い家電製品(グリーン家電)の購入者に対して、様々な商品やサービスと交換できる「エコポイント」を付与することを決めた。各家電メーカーが発売しているエアコン、テレビ、冷蔵庫の省エネ性能を星の数で表し、4つ星以上の製品を対象にエコポイントが発行されるものだ。これは“エコ”を旗印にして国がクレジットカードのポイント制度を運用するようなもので、これまで環境問題に関心が低かった消費者でも、ポイントが付くのなら我が家でもエコ家電に買い換えようという気にさせる。

このような動きから読みとれるのは、従来は目に見えなかった環境問題が“見える化”されて、金銭的な価値に換算することも可能になってきた点である。そもそも、自然の環境は人間が生きていくために欠かせないもので、生命の源になっているため、考え方によってはお金以上の価値があるはずだ。

それが「環境マネー(エコマネー)」の発想で、企業が販売する商品やサービスの料金体系にもエコマネーの価値を盛り込むことが、新たな課題になっている。たとえば、スーパーがレジ袋の無料配布を止める代わりに、マイバックの持参者に独自の割引ポイントを発行するのもエコマネーの一つといえる。ただしこの背景には、レジ袋を有料化したことでスーパーの売り上げが減少している実情がある。仕事帰りにスーパーに立ち寄ろうとしたが、今日はマイバッグを持っていないために行くのを諦めたとか、毎度の買い物はマイバッグのサイズに収まる分量までに抑えるようになったという消費者が急増しているのだ。そのため店によっては、1割近く業績を落とすところもあるほど。

レジ袋の無料配布を再開したいと考えている店は少なくないが、それでは環境活動に熱心な消費者からの印象が悪くなってしまう。もともと、経済活動と環境問題とは相反する部分があることは否めないが、それをどこで折り合いを付けて、顧客に納得してもらえばよいのか、企業は悩んでいる。それを解決するのが環境への貢献度を数値化して交換できるエコマネーの発想といえるが、その仕組みにはまだ不明瞭な点が多く、これからの進化や機能開発が期待されている分野だけに商機が見込める。
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この記事の核となる項目
 ●エコポイントの仕組みと問題点について
 ●環境社会における工業製品の生き残り策
 ●カーボンフットプリントによる環境改善のビジネスモデル
 ●製品のライフサイクル全体でみるカーボンフットプリント
 ●カーボンオフセットで調達される環境マネーの行く先
 ●社会貢献から投資〜投機へ向かう環境ビジネス
 ●エコマネーが起こす環境バブルへの警鐘
 ●カーボンオフセットによる環境事業の資金調達
 ●環境をカネで解決することの限界と新たなエコマネー
 ●マイナス利子によるエコマネーの発想
 ●水危機の到来に向けた「水を売るビジネス」の布石と死角
 ●ヤワな日本人には太刀打ちできない一触即発の食糧危機


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