仮想空間で形成される経済圏と仮想キャラクターの価値
ゲームの楽しみ方として、フレンドとオンライン対戦をしながらボイスチャットで交流することが流行っている。ゲーム上ではリアルな友達同士がフレンドになることもあるし、スコアを競い合った遠隔のユーザー同士がフレンド登録をして、友達付き合いに発展することもある。オンラインからの出会いにはリスクもあるが、ゲームという共通の遊びの中で価値観の合う仲間を作れることには、孤独を救える効果も期待されている。
ゲームフレンドの良いところは、リアルな容姿、年齢、性別を意識することなく、理想の仮想キャラクターを作り、オンライン対戦を通して関係を築いていけるところであり、この人間関係をビジネス上の交流や働き方に応用することも注目されている。
任天堂スイッチ(Switch)の人気ゲームとして730万本を売る「あつまれ どうぶつの森(あつ森)」には、自分の会議室やイベント会場を作り、友達を招待できる機能があるが、これをテレワークに活用しようとする試みもある。ユニークなキャラクターの姿で参加する交流会では、リアルな人格よりも友好的で平和な雰囲気で意見交換ができるメリットがある。
このスタイルは、デジタル・ヒューマニティーズ(人文情報学)という分野で学術的にも研究されており、スタンフォード大学とアリゾナ州立大学のチームは、世界の研究者を「あつ森」の仮想空間に招待して、新論文の講演イベントを定期的に開催している。
■Animal Crossing: New Digital Humanities
コロナ禍では、ZOOM等によるビデオ会議が普及したが、カメラを通した顔出しに抵抗のある人は多く、リアル(実際に合う)、ビデオ会議に次ぐ、第三の交流スタイルとして「仮想キャラクターとしての交流」は次第に普及していく可能性があり、それがメタバース市場と繋がっていく。その準備段階として、好きな仮想空間で自分のキャラクターを作り、育てていくことがビジネスパーソンや企業にとっても必要な時代になりつつある。
任天堂(7974)の業績は、売上高の90%をSwitchプラットフォームによる収益が占めており、Switch本体の販売台数は世界で累計1億3000万台、ソフトは11億3000万本を超している。Switchの所有形態は、一家に一台ではなく、一人1台へと変化して、スマホと同様にコミュニケーションツールとしても活用されはじめていることが好業績の要因だ。
任天堂ゲームの中からは、スーパーマリオ、ピカチュウ、カービィ、ピクミンなどの人気キャラクターが育っていることも、ゲーム事業の売上に寄与している。
2023年4月に公開された「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」は、世界の興行収入が13億ドル(約1800億円)を超すヒット作となった。
■ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー
この映画は、米ユニバーサル・スタジオの子会社として、3Dアニメ映画を製作するイルミネーション・エンターテインメントと任天堂がライセンス契約を交わし、スーパーマリオが主演の映画が製作された。任天堂に支払われるライセンス料は、同社にとって大きなものではないが、映画を見た観客からは、新たにゲームソフトを購入する層は多いため、それ以上のメリットがある。
このように、人気化した仮想キャラクターの権利を収益化することはIP(知的財産)ビジネスとして成長しており、企業の新たな収益源として大きな柱になりつつある。
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■JNEWS会員レポートの主な項目
・あつ森ゲームの中で行われるリモート会議
・キャラクター資産を活かす任天堂ビジネス
・ソニーのゲームIPビジネス戦略
・4億人が集まるフォートナイトの仮想空間価値
・VTuberによる動画配信の運営形態
・VTuberプロダクションのビジネスモデル
・VTuberの収益構造と利益率について
・アバターで参加するメタバース就活動向
・海外のAIアバターによる人材採用
・アバター就活が普及する要因と対策
・孤独を癒やす仮想ガールフレンドとAIコンパニオン
・ChatGPTによるAI対話システムの開発テーマと運用コスト
■この記事の完全レポート
・JNEWS LETTER 2024.2.5
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