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小売店に併設されるリテールクリニックの開発トレンド

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JNEWS会員配信日 2023/1/18

 既に3年が経過するコロナ感染対策による生活スタイルの変化は、病院やクリニックの受診状況にも現れている。健康保険組合連合会(健保連)の調査によると、持病や体調不良などで通院回数が減った人の割合は全体の25%にもなり、その代替策としてオンライン診療、繰り返し利用ができるリフィル処方箋、軽度の症状ならばドラッグストアで購入できる一般医薬品(OTC医薬品)が活用されるようになっている。

持病がある患者の中でも、通院回数を減らしたことで、体調が悪くなったとは感じないと回答した割合は7割、体調不良の場合も受診しなくても回復した割合は6割となっており、患者側でも医療サービスの選択に変化が生じてきている。

これらの状況は、病院経営にも影響している。国内の病院協会(3団体)が全国約1000件の病院を対象に行った調査では、コロナ前の2019年6月は医業利益が赤字の割合が65.4%だったが、2022年6月には74.4%にまで増えた。現状は、コロナ関連の補助金によって経営が何とか持続できているが、それが終わると破綻する病院も出てくることも予測される。病院経営が赤字体質になりやすい理由には、医療収益に対する人件費の割合が約55%と高く、医薬品や医療設備のコストダウンも難しいことがある。

《国内病院の医業利益》

個人経営のクリニック(診療所)についても、内科、耳鼻咽喉科、小児科、整形外科、皮膚科などで、緊急性が低い症状の患者が減少している。マスクの使用による風邪の患者が減少していることや、外出や部活動の自粛によって事故や怪我の件数も減っていることは直接的な要因だが、それ以外の影響もある。

2022年10月からは、年金収入+その他の所得の合計が、単身世帯は200万円以上、2人以上世帯は320万円以上ある75歳以上の医療費負担が、1割から2割に引き上げられたことで、長期的な通院回数を選らす高齢者が増えてきている。

市場の変化に伴い、クリニックの廃業件数も過去最高のペースで増えているが、そこには後継者不足の問題もある。全国には約10万件のクリニックがあるが、代表者となっている医師の年齢は、60代が40.5%、70代以上が42.0%と高齢化が進んでおり、後継者が居なければ廃業するしかない状況が迫っているのだ。

《診療所代表者の年齢層》

一方で、クリニックに対する患者側の希望として、休日や夜間の時間帯に軽度の症状でも受診できるサービスが求められるようになっている。クリニックが閉まっている時間帯には、救急病院を利用する患者が多いが、救急外来の7割が軽症者であり、救急現場のリソースを奪っているため、一般クリニックの診療体系を、現状よりも便利にすることが求められている。

日本の医療体制は、全国で約8300の病院施設と、約10万件の一般クリニックによって支えられているが、それ以外でも軽症患者の受診対応ができるサービスの需要があり、海外ではその役割を小売業者が担うようになっている。

大手のドラッグストア、ウォルマート、アマゾンなどは、中小の医療機関を買収する形で新タイプのクリニックを次々と立ち上げており、それらは「リテールクリニック」と呼ばれる業態として、従来の医療業界を変革していく可能性が高い。

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