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眠れるモノ資産の価値を再生する換金清算ビジネス

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JNEWS会員配信日 2010/2/18

 ネットオークションで、安値に放置されていたロレックスの時計を偶然見つけた。落札すればかなりのお買い得と言えるが、もしかすると偽物ではないか?という不安がある。ロレックスは“最も価値の高い時計”と言われる一方で、精巧なコピー品も紛れているため、中古品を購入する場合、特に個人間の取引では注意が必要だ。

信頼できそうな出品者が、新品からずっと自分で使っている時計だから間違いないと言っても、ロレックスはメンテナンスや修理の際に、時計職人が純正以外の部品を使うだけで価値が半減してしまうため、売り手に悪意は無くても、ワケあり品を掴まされてしまうことが少なくない。

そんなリスクを最小限に抑えて、本物のロレックスを安く入手する裏技がある。
それはネットオークションで落札して、現物が届いた即日に、質屋に持ち込んで買い取り金額の査定をしてもらうのだ。鑑定のプロとして飯を食っている質屋が“本物”と判断すれば、おそらく本物である可能性が高い。逆に、偽物やワケあり品であることがわかれば、出品者にクレームの申し立てをして返金をしてもらうのだ。

ただし質屋が「本物」と判定しても、巧妙な偽物である確率がゼロとは言い切れない。そこでもっと信頼性の高い安心を得たいのであれば、全国に何カ所かあるロレックスの正規サービスセンターにメンテナンスを依頼すればよい。ベルト調整程度であれば無料で応じてくれるが、本物以外の偽物は受け付けてもらえないことになっているため、そこでメンテが受けられたということは、ロレックス本家が“本物”と判定したことと同意と解釈できる。

ロレックスが数ある時計の中でも、長年にわたり王様として君臨して、換金価値が衰えないのは、真贋鑑定や査定評価のネットワークが世界中で確立しているためである。しかし、そうした価値を鑑定できるのは、一部の人達に限られるため、質屋以外で、銀行などがロレックスを担保に融資をすることはない。

時計に限らず、価値を正しく評価できないために“資産”として扱えないというモノは多い。一般家庭の中にも、様々な家財道具があるが、それらの価値は二束三文という扱いだ。全国消費実態調査によると、1世帯あたりの家計資産額は平均 3,900万円という水準だが、その大半は不動産と預金で占められており、家財道具の資産価値は約90万円しかないのだ。

これと同じことは、企業が保有している資産(動産)にも言えることで、小売業なら、それが在庫商品、製造業なら機械設備に該当する。経済産業省の報告によれば、国内企業が帳簿の上で記載しているモノ資産の総額は 約140兆円という規模だが、これをイザという時に売却しようとすると、半値から3分の1以下の価値にしかならないのが実態。それをもっと高値で換金できるサービスがあれば、企業の資金繰りは今よりもかなり楽になる。それを実現させるビジネスが米国では各種登場してきている。

【小売業の在庫品を換金する新たな卸売業の台頭】

「卸売業(問屋)」というのは、流通業界の仲介役として商品を円滑に供給する役割だが、近年では商品の受発注から物流までが電子的に管理できるようになって、メーカーと小売店の直接取引も増えていることから、昔からある問屋ビジネスも過渡期を迎えている。

しかし小売業者の中では、商品流通に関する悩みがすべて解消できているわけではない。情報化によって高度な在庫管理ができるようになったとはいえ、全国の小売店が保有している在庫品の総額は、手持ちの資金(現金・預金)とほぼ同額のため、仕入れた商品が思惑通りに売れなければ資金繰りが悪化して、来シーズンの仕入れができないばかりか、最悪の場合には倒産ということになってしまう。

店の経営が悪化して手持ち資金が足りなくなった時に、上表の保有資産で真っ先に換金したいと考えるのは「在庫商品」である。しかしその換金ルートは意外と少なくて、在庫が売れないまま、価値が下落していくのを放置している例が少なくない。機転が利く経営者になると、匿名でネットオークションに出品して不良在庫の換金をしているが、単品毎の売却では捌ける量にも限界がある。

そこで米国では、もっと効率的に在庫品を換金できるノウハウを持つ業者が必要とされており、新たな卸売業として成り立つようになってきている。たとえば、DollarDays International社は、中小の小売店が売却したい在庫品を買い取って、個人の独立希望者に対して、eコマース用の商材として提供するビジネスを展開している。商品の卸売りだけでなく、オンラインショップの開業キットもセットで提供しているのが特徴で、数百ドルの開業資金で本格的なeコマースサイトが立ち上げられる仕様になっている。

また、ショップ経営とまではいかなくても、ebayなどのオークションサイトで商品を売りたい副業者や、チャリティ商品として販売したい非営利団体(NPO)に対しても商材を卸している。

DollarDays International

【銀行や債権者を顧客とする新卸売業のビジネス】

 小売店が過剰に抱えて困っている在庫品を買い取るビジネスは、日本ではバッタ屋やディスカウントショップが行なっているが、米国はそれとはスケールが違う市場規模になっている。というのも、銀行などの金融機関が、企業が保有している在庫品や設備を担保として融資する制度が整備されているためで、これを「アセット・ベースト・レンディング(Asset Based Lending:ABL)」という。

米国のABLによる融資総額は70兆円を超すとみられている。つまり、その価値に相当する在庫品や機材が担保として設定されており、融資した資金が回収不能になりそうになった時には、速やかに売却して換金するシステムが出来上がっているのだ。

その換金を担当するのが「リクイデーター(Liquidator)」と呼ばれる業者の存在で、もともと古くから在庫買い取り業を行なってきた会社が、ABLの市場拡大に伴い、一躍注目されるようになった。この動向については、2008.7.25号でも紹介したが、その後も各種の在庫換金を専門とするリクイデーターが多数登場してきている。

在庫品を担保にした融資が、土地や建物(不動産)による融資よりも難しいのは、モノの価値変動が激しい“動産”であるために、融資実行の際に一度だけ登記設定をすればOKということでなく、常に担保品の状況をチェックしていないと、知らない間に“担保割れ”を起こしてしまう危険があることだ。そのため、ABL(動産担保融資)を金融機関が単独で行なうことは難しく、モノの査定評価や換金ノウハウに詳しい専門業者と提携するのが一般的である。

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JNEWS会員レポートの主な項目
・小売店在庫の換金ルートとなる新卸業者の仕組み
・銀行や債権者を顧客とする新卸売業のビジネスモデル
・モノ資産を換金する専門職、リクイデーターの存在
・リクイデーターによるオークションビジネス
・船舶リクイデーターによるヨット清算の流れ
・動産換金市場で活躍する鑑定士とオークショニアの専門
・担保品の鑑定からわかるモノの価値
・換金相場が変動する衣料在庫の監視ビジネス
・廃業する工場設備を清算するオークショニア
・マイホーム資産を守れ!目減りする“我が家”の担保価値
・70兆円を超す担保品の換金ビジネスに向けた商機と発想

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