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  スーパーで販売されている野菜は「F1種」という人工的に品種改良された種が使われている。この種からは形状が整った野菜が収穫できる一方で、来年以降に種子(子孫)を残さずに自滅する特別な操作が施されているため、その安全性を危惧する声もある。
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知財ビジネス化した農業と
子孫を残さないハイパー野菜
written in 2009/6/13

 スイカを種付のまま食べても、種だけは胃や腸では消化されずにそのまま排出されてしまうが、これは種子の生存力によって体内の酵素を効かなくさせるためだと言われている。自然界の生命が自らの品種を絶やさないための防衛本能には恐れ入る。しかしその“自然の摂理”を人為的に操作しているのが、現在の環境ビジネスである。

世界ではエコ対策によるバイオ燃料への取り組みや食糧危機に備える動きとして穀物相場が高騰しているが、その裏側では「穀物の種子」を売ることがビッグビジネスになっている。植物の新品種には知的財産権が認められており、害虫に強くて生育が早くなるように品種改良された麦やトウモロコシの種子には独占的な販売権利が与えられているためだ。

日本国内で消費者が食べている銘柄米やブランド野菜も同様で、品種登録によって権利が守られており、農家では生産用の種子や苗を正規のルートから毎年購入しなくてはいけないことになっている。そのルールが乱れてしまえば、犬や猫が自由な交配をして血統が崩れるのと同じことが、ブランド農作物の中でも起こってしまう。

それでも自然相手のことだから堅いことは言わずに、今年収穫した作物の種子を保存しておいて、来年使おうと考える者がいるのも当然。しかしこれはパソコンソフトを違法に複製するのと同じことで、品種の権利を保有する団体や企業の利益を棄損することになる。そして驚くことに、最近では種子に人工的な処理を施して、翌年以降には発芽しないようにすることで、種子の不正使用や流出を防ぐことができるようになっている。このような種子の操作が、健康被害に関係してくるかどうかは言及されていないものの、自然の摂理に逆らっていることは間違いない。

近頃では、食品の安全性に配慮して“無農薬の有機栽培”と明記されていれば、価格が2割近く高くても購入する消費者は増えているものの、種子の操作までは気にかけていないだろう。しかし実際にスーパーで売られているような商用の野菜は、ほとんどが人為的な品種改良によって操作、管理されているというのが実態。

またバイオ燃料として使われるようになったトウモロコシも、生産性を高めるための品種改良や遺伝子組み換えが頻繁に行なわれており、そこでも知財化された種子ビジネスが展開されている。“燃料用”ということであれば、人体への健康被害は考えなくてもよいため、アトピー症の副作用が生じるトウモロコシも米国では栽培されている。しかし、じつはそれが食用としても流通していた事実も発覚している。

エコや健康への観点から、安全な土地で収穫された野菜や穀物への人気は高まるばかりだが、消費者はもっと根底から立ち戻って“種子の安全性”から配慮していかなくてはならない。「遺伝子組み換え食品」とは明記されていない野菜でも、形が良くて害虫が付きにくい品種改良を繰り返す中で、植物が本来持つ栄養素は次第に削ぎ落とされている。そんなことが具体的にどんな方法で行なわれているのかを知るために、今回は種子を扱う知財ビジネスの動向を学んでみたい。
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この記事の核となる項目
 ●知的財産で守られている植物の仕組み
 ●一代限りで子孫を残さないハイパー野菜
 ●F1種子の流通構造について
 ●環境ビジネスの核となる「種子」の重要性と利権の実態
 ●食糧危機時代に備えた種子バンク事業
 ●北極圏に建設された巨大種子バンクの役割
 ●環境貢献活動の裏にある独占的緑化ビジネス
 ●世界で展開される緑化ビジネスの利権構造
 ●水危機の到来に向けた「水を売るビジネス」の布石と死角


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