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会社経営とは異なる
モノとハコから離れたクラブビジネス
written in 2008/10/11

 起業をするといえば小売業か、モノ作りのメーカーになるか、それとも無形のサービス業を手掛けるか、といった選択肢が一般的だろう。いずれも、まず自分の“商品”を持って、それを求めてくれる顧客を、広告や営業で探すのが商売の基本である。しかし昨今の状況をみていると、商品の寿命は著しく短命化していて、早ければ数ヶ月単位で人気のトレンドは変化してしまう。せっかく掴んだ顧客もすぐに逃げてしまうような事業ならば、常に新しい客を獲得することばかりに奔走して安定した利益を蓄積していくことは難しく、やがて廃業へと追いやられてしまうことだろう。小売業では、POSデータからみた商品の平均寿命は約3年と言われているため、それよりも短いサイクルで売れ筋商品を入れ替えないと、固定客を維持していくことが難しい。商業統計をみても、平成16年〜19年の3年間で小売店の数は8%も減少している。

《国内における小売店の推移》
 ・昭和57年………1,721,465店─┐
 ・平成3年………1,591,223店 │
 ・平成11年………1,406,884店 │小売店の数は
 ・平成14年………1,300,057店 │ 66%に減少
 ・平成16年………1,238,049店 │
 ・平成19年………1,136,755店←┘

 ※出所:商業統計(経済産業省)
飲食業も同様で、近年ではかなり浮き沈みが激しい。事業所・企業統計調査によると、全国には約78万件の飲食店があるが、その中で5年以内に新規開業した店が24万件であるのに対して、廃業する店が32万件という入れ替わりがある。開業する店の4割は5年以内に潰れてしまうという厳しさだ。

このように短命で終わるビジネスに共通しているのは「ハコを持つ商売である」という見方ができる。ハコ(店や設備)を持っていれば、それを維持していくための家賃や人件費が重荷となって、その後の軌道修正が難しい。商売にとって最も大切なのは「顧客を維持すること」であり、彼らの要望や嗜好に合わせた商品やサービスへとタイムリーに切り替えていく必要があるのだが、いつの間にか「ハコを維持すること」へ目的が変わっていることが珍しくない。それならば、いっそのこと自前のハコや商品は持たずに、顧客との関係を築くことだけで成り立つビジネスはできないものだろうか。

そこでヒントにしたいのが、若者のミュージックシーンで人気の「クラブ文化」である。音楽やダンスを楽しむ社交場としての“クラブ”は、昔の“ディスコ”と変わらないように見えるが、じつはディスコの時代よりもっと効率的な運営スタイルが確立していて、店を貸す「箱主」と、イベントを企画して客を集める「オルガナイザー」という役割分担によって成り立っている。オルガナイザーには「組織する人」という意味がある。最近のダンスミュージックはコアなジャンル毎にファンが細分化されているため、箱主が自分の店を特定のジャンルに色付けてしまうと、他の客層が来店しなくなって経営的には上手くいかない。そこでカリスマ的なDJや音楽プロデューサーなど、各カテゴリーで集客力を持つ複数のオルガナイザーと契約して、店を一日単位でハコ貸しする形をとっている。

そのためクラブ運営をしたい若者は、敢えて自分のハコを持つ必要はなく、オルガナイザーとしてイベントの企画と集客を担当することでビジネスが成り立つ。ダンスミュージックだけに限らず、現代では様々なクラブ運営が成り立つ潜在的な需要がある。クラブ運営の特徴は、店や商品を主体にするのではなくて、まず同じ趣味や嗜好、目的を持つ仲間を組織化して、彼らが求めている内容に適した活動の場やサービスを探していくという点である。もともと欧米にはクラブ文化が根付いていて、これは企業が提供するサービスとは切り口が異なっている。

商品の寿命が短命化していることからもわかるように、近頃では「企業と顧客の関係」が希薄になって、“モンスターカスタマー”と呼ばれる自己中心的な要求をする客も増えていることから、企業は顧客との新たな関係作りを模索しなくてはいけなくなっている。そこにクラブビジネスの発想を取り入れることを考えてみたい。
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この記事の核となる項目
 ●コミュニティとクラブは何が違うのか?
 ●顧客クラブの育成で伸びる市場と欧米から学ぶクラブ経営
 ●顧客クラブの育成で伸ばす一眼レフ市場
 ●欧州スポーツにみるクラブ経営の仕組み
 ●Jリーグクラブチームの採算構造
 ●オープンにされない紳士クラブの存在
 ●紳士クラブにみる本物のクラブビジネス
 ●インナーサークル化する新たなクラブ社会とは
 ●天才児を発掘するための教育システムとIQクラブ


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JNEWS LETTER 2008.10.11
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