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  公務員の世界にみられる「天下り」は、民間企業でも親会社から下請会社へと行われている。特にこれが悪いということではなく、定年退職した優秀な人材を業界内の会社で再雇用したいという話は意外と多い。これを発展させると退職者向けの人材バンクサービスが成り立つ。
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天下りはなぜいけないのか?
退職者向け再就職支援ビジネス
written in 2007/7/1

 公務員の天下りを禁止する代わりに、公務員専用の新人材バンク(官民交流センター)を設けるという構想は、世論の突き上げを食らった。一般庶民からすれば「どうして公務員ばかりが優遇されるのか?」といった心理からのことだろう。しかし退職者向けの人材バンクという発想自体はそう悪いものではない。もし自分が勤めている会社で、自分が定年退職した際に、次に再就職先を世話してくれる人材バンク制度があれば安心という気持ちを抱く人は多いはずである。今回の問題は、それを民間企業よりも公務員のほうが先にやろうとしたことで非難が集中した。

そもそも「天下り」は民間企業でも行われている。大企業の部長が定年退職をして、取引先企業の役員に座るというのはよくある話である。たとえば、中堅規模の自動車部品会社が、大手自動車メーカーを退職した元部長を、役員として年収2千万円で迎えることで、そのメーカーとの太いパイプが築かれて数十億円の取引が獲得できるのなら、彼に払う役員報酬など安いものである。会社と会社の取引でも、少なからず人間関係が影響していることを踏まえれば、大企業の中枢部にいた人を自社に迎え入れたいという取引先企業は少なくない。

しかしそんな天下りができるのは一部の人達に限られた話で、大半の定年退職者は自分で再就職先を見つけなくてはならない。そうかといってハローワークへ行っても、これまで積み重ねてきた自分のキャリアが活きる仕事というのはおそらく見つからないし、若い人と同じように人材派遣会社に登録するというのも違うと感じることだろう。つまり現在の日本では、定年退職者が次の就職先を見つけるためのインフラというものが存在していない。

そこで「定年退職者向け人材バンク」という事業プランが浮上してくる。これがハローワークと異なるのは、その人が元の勤務先で培ってきたキャリアや人脈に価値を見いだしてくれる企業への就職斡旋を行うことだ。そのため退職者向け人材バンク事業というのは、同じ会社OBや同じ業界内で設立されることが望ましい。欧米では人材バンク事業を手掛ける退職者団体が多数見受けられるが、日本では退職者向けの団体や組合というものがまだ広く認知されていない。

現役をリタイアした退職者を組織化してどんな得があるのだろう?と思う人は多いかもしれない。再就職先の斡旋にしても、特別な実績のある人は別として、普通の退職者にどれだけ魅力があるのかは疑問符が付く。しかし退職者の集団を侮ってはいけない。米国では 2005/7/19号で紹介した「全米退職者協会:AARP(アープ)」が3600万人を超える巨大組織として、政治にも影響力を持ち始めているし、消費意欲が旺盛なのも、じつは50歳以降で金と時間に余裕のある退職者層なのだ。そのため数万、数十万人という規模の会員を擁する退職者団体には、様々な企業から提携話が舞い込んでいて、収益源となる新サービスを次々と投入することができる。つまり「退職者団体の運営」は儲かる事業といえるのだ。

退職者団体が手掛けるサービスの中でも、再就職先の斡旋事業(人材バンクサービス)は中心的なもので、それを目的として団体に入会する人も多いのだが、その周辺サービスとして、保険、物販、旅行、資産運用、相続などに対する需要も容易に取り込むことができる。それでは退職者団体が具体的にどんな収益構造で、どんなビジネスモデルになっているのかを探ろうとすると、意外にも「労働組合」のシステムと同じであることがわかる。あまり広くは言われていないが、労働組合というのは、じつに巧妙なビジネスモデルによって成り立っている。今回はそれを掘り下げることで、来るべき時代の退職者団体の事業化を考えてみよう。
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この記事の核となる項目
 ●労働組合という団体ビジネスのカラクリ
 ●労働組合の集金システムに習う退職者団体のビジネスモデル
 ●天引きされる労働組合費はどのように使われているのか?
 ●労働組合に求められる新たなサービスモデル
 ●他業者との提携による労働組合の収益事業
 ●米国で勢力を拡大する退職者団体の方向性と人材バンク事業
 ●SOHO自営業者としての寿命と老後の収入プラン構築の必要性


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JNEWS LETTER 2007.7.1
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