テスラのEV販路にはディーラ店舗が無く、広告宣伝費もかけていない。情報発信はSNSで行い、ECサイトと連携したインサイドセールスアドバイザーが注文手続きから納車までをサポートすることで、車両1台あたりの利益率は他メーカーの4倍以上となっている(JNEWSについてトップページ
広告費ゼロで売るテスラのインサイドセールス戦略

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JNEWS会員配信日 2022/9/23

 既存の業界では長年にわたり対面のセールスが行われてきたが、リモートセールスの進化によって、外回り型のセールスマンは次第に消滅していくことになる。
既にそれ実践して成功を収めている企業としては、EVメーカーのテスラがある。

テスラの販売モデルは、セールスマンやディーラー店舗すらも廃止して、購入希望者が Webサイト上で車両の見積もりシミュレーションから注文までを、すべてセルフで行えるようにしている。その代わりとして、インサイドセールスアドバイザーという専門職を、各エリアで採用している。

インサイドセールスアドバイザーの仕事は、車両購入の問い合わせに対して迅速に対応して、注文手続きから納車までのサポートをしていく。ただし。顧客からの値引き交渉には応じない定価販売を貫いている。

他の自動車ディーラーでは、営業担当者に高いインセンティブを与えて販売ノルマを課しているのに対して、テスラでは給料のおよそ7割を基本給として保証している。これには、女性社員の中から、変動幅の少ない給与体系を求める嘆願があったことと、顧客への販売プレッシャーをかけないための配慮がある。

glassdoorの給与データによると、テスラ・インサイドセールスアドバイザーの推定年収は、基本給が54,740ドルと、ボーナス、インセンティブ、株式報酬などの追加分で合計83,791ドルとなっている。実際の給料水準は、学歴(高卒か大卒か)、職務経験、社内資格の取得状況によって異なるが、インセンティブが少ない給与体系は昇給のチャンスが少ないため、販売成績が高いセールスアドバイザーからは不満の声も上がっており、基本給ベースの給与体系にも一長一短がある。

Salary Details for an Inside Sales Advisor at Tesla

このように「対面セールスは行わない」というテスラの販売戦略により、車両1台あたりの利益率が他の自動車メーカーよりも圧倒的に高いことは財務諸表からも明らかになっている。テスラの株主でEVコミュニティの運営者でもあるジェームス・スティーブンソン氏がTwitterに投稿した分析では、フォードやGMと比較して、テスラの1台あたり純利益は4.5倍高いとみている。

《自動車メーカーの純利益比較》

How Profitable Is Each Car Tesla Sells? 4.5× More Than Each Ford Or GM Car

広告やセールスもしない、テスラのネット直販モデルは、販売台数を伸ばすほど利益率が高くなるのが特徴で、テスラ社が公式に発表している車両総利益率(車両の総売上から製造コストを引いたもの)は、 2022年第一四半期には 32.9%という過去最高値を記録した。これは、高級車のメルセデスベンツやBMWよりも高い利益率である。

自動車メーカーが、販売台数よりも利益率を重視するのであれば、広告費をカットするのが最もわかりやすい。その典型例といえるのがスーパーカーメーカーのフェラーリで、同社はF1参戦でブランドメージを高めることに注力して、それ以外の広告宣伝は行っていない。Fiat Group Worldがメーカーから公表されているデータを分析したレポートによると、フェラーリ1台あたりの利益は 94,000ドルで、これはトヨタが44台、フォルクスワーゲンが56台、フォードが908台を売るのと同じ利益に匹敵する。

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