ビジネスモデル事例集
  
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  電子書籍は物理的には存在しない電子データのため、1部、2部と個別に売るのではなくて、購読権のライセンスを一括して販売する方法もある。その仕組みが既に普及しているが、大学の図書館に向けた学術雑誌の販売モデルである。
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学術雑誌に学ぶ、
電子書籍の団体販売とライセンスビジネス
written in 2010/5/27

 紙媒体における雑誌出版の不況は、日本よりも米国のほうが厳しい状況だが、これは広告収入への依存度が高い収益構造になっていることが背景にある。広告料を決める条件になる「発行部数」を伸ばす(減らさない)ためには、購読料の大幅割引も止むを得ず、という方針に傾倒していったことのツケが、いま訪れている。

翻って、電子雑誌の時代はどうなるのかと言えば、リーダー端末の利権を握る企業(現状ではアマゾンやアップル)が、購読料の価格決定権を持つことになるため、そのプラットフォームに乗った発行スタイルでは、やはり購読料だけによる黒字化は難しい。そこで従来の広告よりも進化させた、企業からの依頼を受けた新製品のプロモーションや集客支援を新たな収入源としていく必要がある。

今後の電子雑誌の立ち位置は、テレビとWebサイトの中間になるのではないかと言われている。旅行の際に持参する電子版のガイドブックから、ホテルやレストランの予約、買い物情報の検索などができれば便利であるし、ファッションやインテリア系の雑誌は、通販カタログに近いものになっていくかもしれない。

しかし、すべての読者が広告色の強い雑誌を求めているわけではなく、分野によっては無料のコミュニティやブログでは入手できない、信頼性の高い専門情報の発信者として電子雑誌に期待をかけている。

その例として、学者や研究者向けに発行される学術雑誌の分野では、既に電子版の発行が標準的なもので、最新の研究成果(論文)をいち早く伝達するのに不可欠な媒体になっている。

ネットで大量の情報が無料で入手できる中でも、学術誌の存在価値が高まっているのは、“査読(ピア・レビュー)”というシステムにより、世界の研究者から投稿された論文の内容が、複数の専門家によって精査されて、研究データの裏付けが取れて、注目に値する論文だけが掲載されるためである。そのため、科学や医療分野の研究者にとって、自分の論文が「ネイチャー(Nature)」や「サイエンス(Science)」などの権威ある雑誌に掲載されることは、研究成果が世界的に認められたこと意味するし、ライバル達の研究動向を把握する上でも、これら学術誌の購読が欠かせない。

ネイチャー(Nature)
  http://www.natureasia.com/japan/nature/
サイエンス(Science)
  http://www.sciencemag.jp/

学術誌の発行形態は、検索機能やハイパーリンクによる関連情報へのアクセスがしやすいという点から、紙版よりも電子版のほうが購読者数は増えている。研究者が個人で購読しているケースもあるが、最も大口の購読先となっているのは大学図書館で、日本国内の大学(国立・公立・私立)が契約している学術誌(電子版)購読料の総額は、2007年の時点で150億円を超している。

《大学図書館の電子雑誌購入状況(国内)》
    ・2004年………61.9億円(1校あたり 860万円)
    ・2005年………90.7億円(1校あたり1236万円)
    ・2006年………121.6億円(1校あたり1629万円)
    ・2007年………155.2億円(1校あたり2064万円)

    ※出所:文部科学省
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この記事の核となる項目
 ●広告収入に翻弄される雑誌の収益構造
 ●リーダー端末によって料金が違う電子雑誌の迷走
 ●アマゾン・キンドルでTIME誌を購読する流れ
 ●有料購読+集客支援による電子雑誌の収益モデル
 ●電子雑誌上で物販するeコマースの仕組み
 ●集客支援機能を持つ電子版グルメ情報誌
 ●iPadを起点とした電子雑誌ビジネスの動向
 ●電子卸業者による雑誌の定期購読モデル
 ●電子時代に生き残れる雑誌の方向性
 ●大学図書館を主要顧客とした学術電子雑誌の販売モデル
 ●大学図書館の電子雑誌購入状況
 ●売れ残った空室在庫を売りさばく予約エージェントの採算性
 ●フリーペーパービジネスで最後に笑う勝者の存在と業界構造
 ●都市伝説を仕掛けるプロダクトプレースメントによる新広告
 ●無料新聞の登場に揺れ動く新聞社のビジネスモデルと収益構造


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JNEWS LETTER 2010.5.27
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