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不要なモノと必要なモノとを物々交換するビジネスモデル

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JNEWS会員配信日 2009/4/8
記事加筆 2021/9/13

 部屋の模様替えに合わせて家具を新しくしたいが、いま使っている家具もまだ傷んでいるわけではないのでモッタイないということで、購入に至らないというケースは少なくない。しかし10万円する家具でも、「いま使っている家具と交換+4万円でいいよ」と店主に言われたら心が動くものだ。店にとって、それで算盤勘定が合うかどうかは中古家具の査定をしてみないとわからないが、商売の中に物々交換の発想を取り入れることで消費者の購買意欲を喚起することは十分に可能だ。

そこで最近みられるのが、“バーターショップ”という看板を掲げている店である。これはリサイクルショップから派生したもので、顧客が持ち込んだ中古品と、店内の在庫品とを交換できるサービスのことを指している。従来のリサイクルショップは買い取りと販売が別々になっていて、顧客は持ち込んだ中古品を査定、換金してもらってから、新たな買い物をすることになるが、目の前を行き来する金額(現金)が複雑になると、次の購買意欲が減退するという心理がある。そこでお金の話を抜きにした取引条件を提示することで、商談を成立させやすくする。
たとえば、子供が幼稚園から小学校に進学するという顧客に対しては以下のような交換取引が成り立つ。

《不要になった物から必要な物への交換取引》

顧客にしてみると、幼児用品と学習机の価値が釣り合うかどうかというシビアな計算よりも、現金の支払い無しで学習机を入手できる利点のほうが大きい。一方バーターショップは、自身が損をしない「幼児用品の価値>学習机の仕入原価」となるような交換条件を提示するのが基本。リサイクルショップがバーター取引も兼ねると、買取り資金の負担が少なくなり、店内の在庫も回転して都合がよく、好条件の物々交換を繰り返していくと、わらしべ長者のように在庫の価値が高くなっていく。

バーター取引は中古になっても価値が衰えにくい趣味の道具やコレクターズアイテムの取引にも適していて、骨董品や美術品の世界では「交換会」というものが古くから開催されている。それぞれの業者が保有している作品を持ち寄り、競りによって“必要な物”と“不要な物”を交換することにより、在庫の入れ替えをすることができる。正しくは“物と物の交換”ではなく、作品の売り手と買い手が金銭によって取引をするが、その決済を仲介するのが交換会の役割になっている。美術商には、個人や零細業者が多い反面、高額の商品を扱うために、安全で信用できる交換取引の“場”が必要となったが、現在のネットオークションもそのモデルが原型になっている。

《美術交換会の仕組み》

【コレクター向け交換会としてのスワップミート】

 米国でも交換会に該当するものは存在していて「スワップミート(Swap Meet)」と呼ばれている。週末に大規模な駐車場や公園などを借り切って開催されるフリーマーケットにも似ているが、出品される商材が専門分野に絞られるほど、遠方からプロの業者や熱心な愛好者が集まるため、ビジネスとしても成り立ちやすい。

その例として、米ロサンゼルス郊外で開催される「Pomona Swap Meet(ポモナ・スワップミート」はヴィンテージカーの売買や部品交換などを専門としたイベントで、4月から11月にかけての週末に年8回ほど行なわれている。全米から4千台以上のヴィンテージカー(1950年~70年代にかけてのアメ車、欧州車)が集結して売買の交渉をしたり、中古部品のフリーマーケットが3千店以上も出店している。人気のアイテムを入手したければ朝5時に行かなければ間に合わないと言われているほどの盛況ぶりで、バイヤーと愛好者で約2万人の参加者がある。

このイベントを主催しているのは、ジョージクロス&サンズという会社だが、自社がクルマ本体や部品を売るのではなくて、交換会(スワップミート)の場を提供して、参加者から入場料や出店料を徴収する収益構造になっている。入場料は一人あたり8ドル+駐車料金が9ドル、会場内に車を展示するのは1台につき100ドルだが、コルベットやポルシェ、1975年以前のフォルクスワーゲンなどの人気車は25ドルと安く設定している。また、フリーマーケットを開くためのスペースは1区画(約10坪)あたり40~50ドルで貸し出されている。

Pomona Swap Meet

専門業者やマニアが集まる場所としては、ネットのコミュニティやオークションサイトなどもあるが、そこに掲載されている情報や商品の大半は業界関係者にとっては既に周知となっているものばかりで、掘り出し物に出会うことは少なくなっている。それに対して、リアルな会場で開催されるスワップミートは倉庫に何十年も眠ったままになっていた旧車が初めて出品されたり、希少な部品が安価で入手できることも多い。

日本の美術交換会では、まだどこにも公開されたことがなく、初めて出品される作品のことを「初荷(うぶに)」といって高値が付きやすい。逆に、何度も交換会に出品されているような作品は、次第に価値を落として、一般向けのオークションに流れていくようになる。それがコレクター市場における上流~下流への経路といえるため、どんなにネットオークションが便利になったとしても、リアルな交換市場が廃れることはない。

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